なわとびコラム

強豪国JAPANのコーチから見えたIJRU2023(なわとび世界大会)と、スポーツマンシップ

こんにちは!

なわとびパフォーマーのまっちゃんです。

2023年7月16日~23日で、アメリカ/コロラド州で縄跳びの世界大会が開催されました。

今回も、ありがたいことに日本なわとびアカデミーから教え子がたくさん出場しまして、世界チャンピオンになった生徒もいます。

縄のまっちゃんも生徒のコーチと引率、ジャッジとして参加してきましたので、大会を経て感じたことや、今後の指導の指針になりそうな世界の動向などを、備忘録としてブログで残しておこうと思います。

IJRU2023/なわとびの世界大会とは?

コロナ禍でオンライン開催や大会の延期などを経て、ようやく現地開催になったIJRU2023/なわとびの世界大会です。

とくにジュニアの選手にとっては初の現地開催の国際大会になった人が多く、保護者も含めて初海外だった人も多かった様子。

世界大会では、ざっくり以下の分類で競われます。

シングルロープ※普通の縄跳び

  • 個人戦
  • 団体戦

ダブルダッチ※2本のロープの長縄

  • 団体戦
  • ダブルダッチコンテスト

チームショー※縄跳びなら何でもあり

さらに、それぞれには年齢/性別でカテゴリー分けがされて、さらに種目があれこれあって…なのですが、今回はこの辺の説明は省略しますね。

詳しく知りたい人は、こちらのページを参考にしてください。

世界トップレベルのアジア健在

2020年代に入ってからのオンライン大会でも見てきましたが、アジア各国は想像通りの強豪国ばかりでした。

中国、韓国、香港、日本、今回は参加していなかったけどマカオ。これらの国は本当に上手な選手が多いです。

圧倒的な多重系がアジアの強み

アジア各国の特徴はなんといっても多重系の強さ。多重系は本当に欧米諸国からしたら、圧倒的にアジアが強かったです。そのまま1回転ずつぐらい回転数が多いレベルですね。

日本も含め、レベル7や8といった技を跳ぶために4重跳びや5重跳びを跳びこなす選手が増えている現状。欧米諸国は残念ながらここについてこれている国はごく一部でした。

今回で言えばベルギーやアメリカのシニア選手の一部は多重のレベル7をやっていましたが、レベル8をガツガツ跳びこなしている選手はほぼいませんでした。

一方でアジアはジュニア選手ですら、レベル7-8をゴリゴリ跳んでいたので、そりゃもう雲泥の差になっています。

スピードの考え方が根本的に違う

世界大会の練習体育館でこんなシーンがありました。

教え子たちが練習を兼ねてスピードトレーニングをしていた横で、別の欧米の国が同じようにスピードの練習をしていました。すると練習しながらふと、選手の一人が「なんで彼らはアップをしないんですか?」と訪ねてきました。

教え子たちにはスピードのアップやトレーニングのイロハを叩き込んでいるので、どうやって準備をして練習をするかを理解しています。しかし隣で練習していた国をよく見てみると、ほぼアップ無しでいきなり30秒を跳び始め、数本跳んだ後に別の練習に入っていきました。

もちろん何か別の意図があったかもしれませんが、スピードの練習をすることに対しての根本的な考え方が、アジアと欧米では異なっているのかも?を感じたエピソードです。

日本は真似されている

IJRU2023の段階では、まだアジアや日本はトップにいました。しかし、日本は諸外国から相当真似されていて、かなりの注目を浴びています。

たとえば、前回のオンライン大会では欧米諸国のほぼ誰もやっていなかった「SEBOCL」や「EBTJCL」などの多重系の技を、上位選手は取り入れていました。

さらにスピードのフォームの作り方や、縄の長さなど、日本やアジアを意識して取り入れているだろうなぁと思えるシーンが何度もありました。

今でこそ世界トップレベルにいますが、ウカウカしていたら一気に他の国が追いついてくる。そんな危機感を感じます。

スポーツマンシップと勝負偏重への危惧

上記でも書いたように、日本を始めアジアは本当に強くなりました。IJRU2023では、表彰台をアジアで独占することもしばしばでした。

一方で少し懸念しているのが「勝負偏重」の風潮です。

大会なのだから、勝つか負けるかの真剣勝負なのは、まさにそのとおりです。ただ勝負にあまり気持ちが飲まれすぎてしまうのは、今後の選手達にとってマイナスだなぁと感じています。

勝負偏重の行き着く先

勝負にこだわりすぎると、最終的に勝つことだけに価値感を持つようになってしまいます。逆に言えば、1位以外に価値はないと…これって非常に苦しいです。

トップレベルの選手なんて、技術レベルはほぼ僅差です。勝つか負けるかは、時の運によって変化することだってあります。なのに1位以外に価値がないになると、負けた時に心がポキっと折れてしまうんですよ。

負けたら悔しいですし、そりゃ勝ったほうが嬉しいです。でも負けた方が学べることが多いのもまた事実です。

スポーツマンシップの意味をいま一度

日本ではない別の国の選手との会話の中で、こんなエピソードもありました。

ある種目の試合が終わった後、とある国の選手に突然話しかけられました。誰もが知る有名選手だったので、びっくりして話を聞くと、

「いま出ている結果が間違えているから、しっかりアピールした方がいい。このまま(話しかけてきた選手の)自分の国の選手が表彰されているのはアンフェアだから、ちゃんと頑張った選手を評価してあげてほしい」

この話を聞いた時に、さらに驚きました。なにしろ自国の選手の表彰台が間違っていて、ライバルの選手が乗るべきだと教えてくれたのです。気付かなければ誰もわからない、なんなら自分にとって不利益になるようなことのはず。

彼は国やチームを超えて、選手としてフェアに競技を戦ったことを評価して欲しいとしきりに伝えてきたんです。

最終的には、ここには書けない事情で結果は覆らなかったのですが、本当に彼の人間的な素晴らしさとスポーツマンシップの心に感動しました。

このエピソードは、選手だけでなく自分を含めた周囲の大人がしっかり受け止める必要があるなぁと感じています。選手たちはお互いに大変な努力をしてきているので、認め合うことがしやすい。しかし周囲で見ている大人たちは、努力を見ているからこそ報われて欲しいと強く願ってしまう。

むしろ、シューッと視野が狭くなりがちな我々こそ、肝に銘じておくべきかもです。

エンタメと競技の融合

IJRU2023では、ジャッジの結果についても色んな意見がありました。ここではジャッジについて細かく議論はしませんが、とくに気になったのがプレゼンテーションの考え方です。

アジアでも最大規模の選手数を派遣している香港が、今回の大会では軒並みプレゼンテーションでマイナスを食らってしまう現象が起こりました。

どんなジャッジ結果になっても誰かしらが文句を言う、という名言(迷言?)も大会期間中に聞きましたが、とはいえ香港選手のマイナス具合は気の毒なレベルでした。

ただ、色々自分なりに分析をしてみると、プレゼンテーションで高いプラスをもらっている国やチームにはある程度共通点が見えています。香港はこの観点からいけば、かなり厳しい評価を受けても仕方ないのかなと。

高い技術で盛り上がるか、エンタメを見るか

細かく書くと長くなるので、ざっくり言えば香港は技術で盛り上がるお国柄なんですよ。スゴ技や超絶技をやったら盛り上がる。でも世界の基準は少しズレていて、エンタメ性を見ている印象でした。

超絶技をやっても、単なる技の羅列ではエンタメ性は低い。しかも、見た目も決して美しいものではありません。

一方で多少難易度は落ちたとして、観客や音楽を意識した演技は評価が高い。この点で日本のプレゼンテーション評価が高かったことも合点がいきます。

まとめと今後の予想

久しぶりの現地開催の世界大会は、学ぶことが本当に多い時間でした。ここに書き切れないぐらいのエピソードや刺激、不条理なことまで、たくさんの経験をしてきました。

やはり、世界大会はできるだけ多くの人に経験してほしいですね。あの場所は勝負事だけでない特別な空間です。同世代の選手同士の国際交流、英語でのコミュニケーション、異文化とのカルチャーショック。

今回の記事はこのぐらいにしておきますが、機会を見てまた備忘録を出していこうと思います。