こんにちはー。 縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。
自分が縄跳びを始めた頃に比べ、ダブルダッチの大会がもの凄い増えてますね。当時はDouble Dutch Contest、Double Dutch Challenge、あとは数年後にDouble Dutch Delightが誕生した頃でした。
大会が乱立するか、個人的に気になっているのが「Double Dutch One’s」。これまでチームだったダブルダッチに個人戦になったんです。でもこの大会、正直自分には理解を超える部分があった。
そこでこの疑問を、先日大会ジャッジで一緒になったカプリオールの「Kaiくん」にぶつけてみました。
Double Dutch one’sとは?
この大会は一言でいえば「ダブルダッチの個人戦」です。これまでダブルダッチといえば3人以上のチームで演技を競っていました。
でもDouble Dutch one’sは一人で戦うことができます。すると仕事の関係でチームを組めない人や、個人の実力を試したい人にとって格好の舞台になったんです。とくに卒業や就職で環境が変わると、一緒にチームが組めなくなる事多いですからね。
簡単なルール
Double Dutch one’sのルールは至ってシンプル。
音楽に合わせて一定のリズムで回るロープの中で、1分ずつ演技をして相手と競います。ポイントはリズムが一定なのでターナー*1に助けてもらえないこと。
普通、ダブルダッチの演技ではターナーがジャンパー*2に合わせて回すんです。アクロバットや地面に手をつく技だと、ゆっくり回して合わせる。早く跳ぶなら足を見てリズムを取る。
このコミュニケーションがあって初めて高難度なダブルダッチの演技が成り立っていたんです。
しかしDouble Dutch one’sだとロープは一定。つまりジャンパーの実力が如実に現れるんです。チームだったら多少のズレも合わせてくれますが、ここではそうはいきません。
フリーロープ、リズムから生まれた
ではこのDouble Dutch one’sは形式はどこから生まれたのでしょうか?
元をたどると関東でいう「フリーロープ」、そして関西でいう「リズム」という遊びから生まれたそうです。呼び名は違いますが、やっていたことはほぼ同じ。
バックで音楽をかけて一定のリズムのでロープを回す。その中で何ができるかを競う遊びです。カッツリ決めた流れはありません。即興的にその場にいた人が跳ぶだけです。上手な人はスピード*3をしたり、またある人は中でダンスを踊ったり。
個々人の得意なことを、ロープの中で即興的にやる。これが発展して相手のいる「バトル」になったのがDouble Dutch one’sなんです。
Double Dutch one’sの疑問点
自分自身、Rope tubeで何度も映像を見たことがあります。
ロープの中で即興的に跳ぶのは分かるんです。ただ相手と競って勝負するとなると、いくつかの疑問が生まれました。
何が評価基準なの?
バトルというからには勝ち負けが決まります。じゃ、その勝ち負けを決める基準が何なのか。最初の疑問はこれでした。
たとえば明らかにミスっていたら分かりやすいです。中に入ったは良いけど、何もできずに失敗ばかり。これで負けるのは何となく合点がいきます。
ただこれはレベルの低い話で、上位者になればほぼミスはしません。そして両者ともにダンスを踊り、スピードを跳び、アクロバットを入れ込む。
こうなると「◯◯は□□に勝ってる❢❢」という基準がわからなくなるんです。
勝つのに必要なのは何?
この疑問をぶつけると、Kai君からは「音のとり方・使い方」「グルーブ感」「ノリ」「1分間の構成」「相手への挑発」といったキーワードが返ってきました。
たとえば「音楽のとり方・使い方」。
大会では本番までどんな音楽が流れるか分かりません。いざ舞台に立った瞬間、DJが流す音で戦わなければいけないのです。この時、いかに即興的に「音楽にノれるか?」「動きをハメられる*4か?」が大切だといいます。
たしかにいきなり音を流されて動け!と言われても、初心者には難しいですよね。
しかも1分間という短い時間。いかに技を組み合わせるかの構成力も必要になります。相手の出方を待ってから別の技で被せるとか、見せ場のためにどうやってそこまでを演出するかとか、即興でありながら考えられた構成が求められます。
また他のキーワードで興味深かったのは「グルーブ感」。音楽で使われる意味だと「ノリ」「一体感」「人間らしさ」「ズレ」だといいます。
「ノリ」の正体は「うねり」です。あるいは「ズレ」とも言います。絶妙な「ズレ」です。
うねりを意図的に出す為に必要なことは、リズムキープが必須です。まずは機械のように一定の音量でリズムキープすること。それが出来た上で、意図的に微妙なズレや音の強弱を追求します。
この考え方がダンスバトル、ひいてはDouble Dutch one’sにもあるのでしょう。
たしかに場が一体になる高揚感は、どこか人間くさい「ズレ」から生まれているように思えます。
Double Dutch one’sはダッチャーの究極系
Double Dutch one’sは様々な知識や技術を兼ね備えている必要があります。
音楽にノれること、1分間で即興的に構成を作れること、相手を見て臨機応変に動けること、そしてロープの中で自由に動ける技をもっていること。
こう考えると、単にダブルダッチが上手なだけでは難しそうです。身体を使うのはもちろんのこと、シッカリ頭でも考えられる人でないと勝ち残れない。会話の中でも「◯◯が最近勝てなくなったのは、演技構成が出来ないから」という話が出ました。跳ぶだけの人、は勝てないんです。
チーム演技ではメンバーの力を足して闘うことが出来ます。しかしDouble Dutch one’sでは「一人」でダブルダッチの要素を網羅する必要があるのです。
おわりに
Kai君に話を聞いてみると、本当にたくさんのことを考えて跳んでいるのだとビックリしました。彼の中にどれだけの動きと音楽、それらのバリエーションが渦巻いるのか検討もつきません。
Double Dutch one’sはダブルダッチャーのすべて兼ね備えた総合格闘技。
ただその一方で、見る人にも一定の知識が求められる大会です。自分のように「なぜあっちが勝ったの?」というのが察しきれない人にとっては、ややハードルが高い大会なのかも知れません。