こんにちはー。 縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。
人前で演技をする時、あなたは演技のことをなんて呼んでいますか?
アクト?
フリースタイル?
デモンストレーション?
どの呼び方も演技をすることを指していますが、自分はこの3つを明確に使い分けています。もし本気で人様に演技を見せるのなら、真剣に考えたほうが良いですよ。
目的が違う三つの演技
はじめに、自分が考えるこれら三つの定義から。同じジャンルであっても、目的が違えば呼び名が変わります。
たかが名前ですが、名前を与えられたモノには意味と概念が生まれます。つまり名前の無い=これまで認識されていなかったというコト。名前をつけてはじめて「考える」がスタートするのです。
デモンストレーション
デモンストレーションとは、技や演技を通じた「模範演技」です。どんな技があるのか、どんな跳び方が出来るのか。お客さんに伝わりやすいように技を解説するのもデモンストレーションですね。
たとえばスーパーやデパートの実演販売に近いですね。
「知ってましたか?皆さんが知ってる縄跳びにこんな技があるんですよ。こうして縄跳びを跳ぶと、こんな面白いことが出来るんですよ。ぜひ一緒にやりませんか?」
最後の一言がデモンストレーションのポイントです。演技を通じて興味を持ってもらったり、お客さんにも跳んでみようかなー。という気持ちを起こさせたり。終わった時、お客さんが「やりたい!!」と思わせるのがゴールです。
フリースタイル
フリースタイルとは縄跳び競技の「自由演技」のことです。一人跳び(単縄)の場合「75秒以内で音楽にのせて技を組み合わせ演技をつくり、その難易度や出来栄え、完成度の高さを競うもの」です。
つまり競技です。勝ち負けの付くスポーツなんですよ。
最優先で見せる相手は審判。玄人目線の審判に、どうやって高い点数をつけてもらうか?が重要です。もちろん観客も居ますが、あくまでこちらは二の次。どれだけ観客を盛り上げようとも、審判が点数を出さなければ勝てません。
アクト
アクトは「観客に届けること」を目的にして行う演技のこと。
演技前後で観客に何かしらの変化をもたらすことを目指します。なので扱う題材はあまり関係ありません。縄跳びでも他の道具でも、目的とする場所が同じなんです。
観客に届けるとは「伝えること」とも言えます。もっぱらパフォーマンスだと「楽しさ」や「目新しさ」を前面に出しがちですが、伝える内容はなんでも良い。悲しみでも屈辱でも、愚かさでも良いんです。
パフォーマーの陥りがちなミス
この三つをごちゃ混ぜにして演技をしているアスリート系パフォーマー、実はメッチャ多いんですよ。
特に多いのが、競技演技をそのまま演じている人。たしかに難易度の高い技や洗練された動きにも価値はあります。でもこの演技は一般の人にとって面白みがあるでしょうか?玄人目線なら良いですよ?難しい技の組み合わせや世界初の技、技術を競う大会で盛り上がるのは当然です。
でも一般観客の前でやっても、みんな置いてけぼりです。さらにこの状態で盛り上がれというのも無茶な話。この技難しいんですよ!って言われても、観客は皆「知らんがな!!!」と一斉に心の中でツッコんでますからね。
それ、本当に観客が求めている演技?
デモンストレーションやアクトのように、一般向けの演技は一般向けに創る必要があります。
あなたの演技を今日はじめて見る人だっているんです。なんなら、同ジャンルの演技すら初めてかもしれません。そんな人に「世界レベル◯◯難度のワザーーー!!」とか言っても、通じません。伝わりません。
縄跳びだと「異なるT.J.の5連続コンボ!」とか、ほぼ一般の人は分かりません。なんだかヒュンヒュンやってるね…程度です。だったら二重跳びとハヤブサあたりを跳んで、三重跳びを5〜6回やったら同じですよ。どっちもヒュンヒュンしてますしね。
デモンストレーションやフリースタイルで難易度を追い求めるのは、突き詰めると「こんな難しい技ができるんだよ!」と言いたいんです。難しい技を習得して、見せびらかしたいだけなんです。
たしかに演技を創る上で「技術」は必須です。しかし「技術」の見せびらかしに付いてきてくれるほど、観客は甘くありませんよ。
おわりに
日本には素晴らしい技を持ったパフォーマーはたくさんいます。世界レベルの技や演技をしてる人だって少なくありません。
ただ今ひとつ、日本のパフォーマンス業界は盛り上がっていません。海外より日本はレベルが低いだの、日本はパフォーマンスを見る文化が根づいてないだの…もう聞き飽きました。
パフォーマンス業界を担うのは誰でしょうか。紛れもなく我々パフォーマーですよね。
確かに諸外国に比べれば、日本でパフォーマーとして食べていくのは難しいでしょう。しかし食べるのを難しくした一端を担っているのも、パフォーマーなんですよ。
海の向こうを見て羨んでばかりじゃ始まりません。まずは日本国内に目を向け、あなた自身の演技に目を開くのが優先ではないでしょうか。