なわとびコラム

チャンピオンや勝敗を「個性」と思い込むと苦しい。トップ陥落の時に考えたい「察する」こと。

こんにちはー。 縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

スポーツの世界は残酷に「順位」がつきます。勝てばチャンピオンです。

自分も過去にはいくつかの大会で優勝しました。マイナーながらチャンピオンでした。

一度でもトップを取った人は「頂点に立っている状態」を個性と感じます。チャンピオンであること=自分の価値と考えるんですよね。

周囲もそう見ます。この人は全日本チャンピオンなんだ、って。ただ、頂点に立っている状態を個性と思い込み続けると、けっこう苦しいんです。

チャンピオンという個性は儚い

当然ですが、時間が経てば別のチャンピオンが生まれます。2014年の世界チャンピオンがいれば、2015年の世界チャンピオンもいます。無敵の連覇を成し遂げたスーパースターでも、いずれは次世代に抜かれる運命。

ところがチャンピオンを「アイデンティティ」と思い込みすぎると、別の誰かにチャンピオンを奪われた時にヤバイ。 しかも時の流れは残酷で、無敵のチャンピオンでもいつかは別の誰かにチャンピオンを受け渡す時が来ます。これは100%です。

チャンピオン以外にも「日本代表」とか「記録保持者」とか。こうした移ろいやすく、時代に大きく影響されるモノを「アイデンティティ」や「個性」と捉えてしまう。

状態を維持できる間は大丈夫です。ただ、いつかその状態が失われることを忘れているアスリートが多いんですよね。

他人の評価をベースにする問題点

現役引退後に燃え尽きてしまうアスリートが多いのも、これが原因の一つです。

同じことが「チャンピオン陥落」「記録喪失」といった時に起こりやすい。場合によっては「うつ病」に繋がる深刻なこともあるんです。

トップを極めた人が抱える問題点は、アイデンティティや個性を「他人から評価」をベースにしていること。

大会優勝も記録保持者も、他の誰かと競争して初めて得られるものです。ゆえに他の誰かが強くなれば、世間はそちらを評価します。競技の世界とはそういうものなのです。

若い人に「競争」で学んで欲しい3つのコト

陥落後こそが勝負

粕尾将一は競技選手としてはアジアレベルでした。世界で勝てるとは・・・正直思えなかった。

ただこの感覚があったからこそ、指導やパフォーマンスへと軌道修正できて「アイデンティティ」を失わずに済んだのです。

あなたは「好きなコト」で自分を騙していませんか?

自分は「勝てない…」と悟った時が勝負でした。ここで「人に奪えない個性」を見つけるために別の道を模索しました。2014年のシルクドソレイユ日本公演で主演をしていていた「谷口さん」も、インタビューで似たことを言っています。

彼も一度は体操選手としての夢をあきらめている。

しかし、彼はこの決断のおかげで、シルクドソレイユという「別の試合」に臨むことができた。
そして今や日本人初の「主役」というスターにまで登り詰めた。

引用:『あきらめたら、そこで試合終了ですよ?』の落とし穴

人はどこかのタイミングで「これまでか…」と察する必要があります。谷口さんと自分は、世界の壁を目の当たりにして察しました。おなじようにトップを極めた人は「陥落」の時に察する必要があるのです。

ここで察するコトから逃げ「まだイケる!」と思いたい気持ちも理解できるんです。ただそれは頂点に立っていた状態に「依存」し、温かい場所にしがみつこうとしてるだけ。最後は執着によって本人を苦しめるのです。

おわりに

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photo by h.koppdelaney

チャンピオンが陥落した時、競技自体を好きだったか「状態」が好きだったかが問われます。どちらが悪いということじゃありません。自身と向き合う上で知っておいたほうがお得なのです。

競技自体が好きなら他の方法で関わればいい。スポーツ競技はOBOGの力で成り立っています。もし「チャンピオン状態」が好きだったのなら、別の勝負を見つけてみてはどうでしょうか。こういう人は、別分野でもトップに立てる素質があると思うのです。

いずれにしても、一度でも頂点を極めた人の力は、必ず活かせる場所があります。