シルクドソレイユアーティストの日常

個性は叫ぶモノじゃなく、探し当てるモノである。

Rice rabbit

個性的になりたいものである。

この仕事では個性的であることが重要だ。個性的であることはすなわちステージでの存在感である。あなたの個性は何ですか?あなたのキャラクターは何ですか?と何万回聞かれたことだろうか。

ステージ上の役割に関係なくすべてのアーティストに「個性的」であることが求められる。

自分は悲しいことに個性的ではない。
ジュースならオレンジ、アイスならバニラ、モナカならモナ王といった具合で、本当に平々凡々な人間である。本音を言えば人と同じことが好きで個性を求められると少々困ってしまう。

この職場には自分と真逆に「俺様の個性とは!!」みたいに個性を全面に出せる人が大勢いる。彼らは自らの個性を認識しているだけでなく、どうすれば活かせるかまで知っているかのようだ。そんな人達を間近に見ていると「自分って個性がない…」と凹む。

一方、上記の質問と同様この職場でよく聞くフレーズが「Find Your Characters」である。直訳すればあなたのキャラクターを見つけなさい。つまり個性は「出す」のではなく「探す」という認識なのだ。

個性が無いのではない。気付いていないだけ。

個性を探すというのはこちらに来るまで聞いたことがなかった。生れつきの特性で自然とそれが外に出ているモノ?みたいな認識。だから能動的に引っ張りだすものじゃなくで、自然と滲み出てくると勝手に解釈していた。ゆえに何も滲み出てこない自分は個性がないんだなぁ…と凹んでいたのである。

でも「Find your Character」となると印象が変わる。
探すということはまだ気付いていないということ。自分の個性なのに見えていない、だから探す。

意識的な行動に出ないと見つけられない。
そう、個性が無いのじゃなくて見つける努力していないだけ!!

この理屈だと個性は誰にでもあると言える。広く捉えればアーティストに限らない全ての人も個性に気付いていないだけで、探せば見つかる、ということ。

付け加えるのではなく、削ぎ落として残ったもの

自分の印象だと個性を見つけるには「削ぎ落とす」行程が必要。

それはステージの上でも同じことで、たとえばA地点からB地点まで歩く状況を想定しよう。
歩くなんて動作を意識している人は殆どいないと思うけど、年令や性別、更に出身地や人種でも随分と異なる。さらに個人の違いも顕著で、ある人はカカトを擦るように歩くし、ある人はつま先に力を入れて歩く。じっくり観察すると同じ歩き方をする人はなど居ない
(※)歩行を文化として研究している人もいる

これは「歩く」動作から共通点を削ぎ落として残ったほんの僅かな違和感や癖。しかし普段は誰も気にしないし、相当意識してじっくり観察しないと見えてこない。
ところが一度発見されると、妙に癖や違和感が目に留まる。この歩き方の癖は○○さんのやつだ!!すぐに認識する。

これが個性を見つける、探す行程なのだ。

目には見えにくいが、ハッキリと存在する

繰り返しだけどステージで大切なのは存在感。
いかに存在感を出して客席にエナジーを届けるかが重要である。もちろんサーカスなので洗練された技や卓越したアクロバットも必要だけど、これだけじゃ客席に届かない。

個性、癖、普通とは違う違和感。これらを総称してキャラクターと呼ぶ。

キャラクターを探し、膨らませ、客席に引っ掛かりのような感情を持たせる。
「ほら、こんな動きをしてた人!!」と観客に言わせられたらキャラクターの勝利。いつ見てもそのアーティストの個性、違和感、癖に目が留まり心の中に存在し続ける。

★★

ワザとらしく人と違うことをして目立つのが個性ではない。
天邪鬼のように人と違うことをやるのも個性ではない。

むしろベクトルは正反対。
みんなと全く同じことをしてるのに出てくる違和感。
同じ服、同じ動作をしているのに妙に引っかかる感触。

個性を探すのは大変だ。けど、
頑張って探し当てれば誰にも真似できないお宝になること間違いなし。

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2016年10月16日