久しぶりに怪我でアウトしてしまった。
先月から新しく縄跳びアクトに入ったダブルダッチ。
演技も安定してきて、さて次のステップに進もうかと思った矢先だった。
演技終わりでステージから降りようとした時、嫌な予感がした。
這い出るようにステージから降りた1stショー。
本来だったらスグにでもフィジオに駆け込むべきだったのだけど、ひとまず痛みを取るために冷やして保留。
強引に2ndショーの演技を終えた後、あまりの痛みフィジオに駆け込んだ。
この段階で既に歩くことはままならない。
足首と膝に痛みがあって、膝を床に着ける動きや走る動きは不可。
痛みが出るため大半のキューをカットしてもらい、挙句にカーテンコールも出ずにショーを終える…。
ショーの後のフィジオ判断は当然のごとく一発でアウト決定。
少しごねてみたけど、
歩くのも困難な状態でステージに上るなんて到底許可できないと叱られた。
どのタイミングでアウトする?
舞台人の宿命で親の死に目に会えない、なんてよく言われる。
http://www.h7.dion.ne.jp/~kanon.co/piano_selection/03/opinion/opinion_003.html
風邪をひいて今にも倒れそうであろうが、何があっても舞台人はお客様に楽しんで頂く為、自分の姿を見て頂く為、「頑張らなくては」いけないんです。
この考え方は極端かもしれないが、
この仕事を始めてからずーっと命題になってることがある。
どのタイミングでアウト(ショーを休む)か??
ケアを入念にしていても、時にどうしても怪我をしてしまったり慢性的な痛みが出てしまう。
とくに自分のスタイルは高いジャンプをするので、衝撃がモロに関節に出る。
膝の痛みなんてしょっちゅうだし、アキレス腱やら足首が痛いのなんて日常茶飯事。
これまでは多少の痛みがあってもショーに出てきた。
そりゃフィジオが絶対にダメ!っていう場合は別だけど、
湿布貼ってでも痛み止め飲んででも、ステージに立つことを選んできた。
ここまでするのはショーを休みたくないから。
ショーを休むということは、まず第一に他の人に負担を強いることになる。
縄跳びは2名のアクトということもあり、仮に自分がアウトすればnasaにソロを任せることになる。
その負担は想像以上にデカイ。
たしかにソロだと少し尺が短くなる。
それでも1人で3分間、ステージで跳び回るってのは本当に大変なことだ。
でもね、
今回の怪我で休むかどうかスレスレの判断を待っていた時。
心の片隅に別の理由・感情を感じずにはいられなかった。
休まないことで張っている糸
身体に痛みがあるとはいえ、縄跳びのアクトは気合でなんとかなる。
膝が痛くても、ステージに上ってしまえばアドレナリンで痛みは殆ど感じない。
もちろんステージを降りた後に激痛というオプションはついてくるけどね。
自分を構成する価値観の中に、
ステージで演技ができる以上は休まないっていうポリシーがある。
たとえ痛みがあろうと、風邪をひこうと、
そこに一生に一度かもしれないお客様が居るのだから、
何よりもステージに立つことを優先したい。
この思いで4年間ステージに立ち続けてきた。
だが一方で、これは自分をキープための意地でもある。
常にステージに立っている自分をどこか遠目に見て、
「まだイケる」「もっと頑張れる」と、気持ちの糸を張り続けているのだ。
★★
この糸はきっと縄跳びを始めた頃から張ってきたものだと思う。
手前味噌だけど、出張指導に欠席したことは前十字靱帯断裂の怪我の時以外は無い。
縄跳び教室も、怪我や病気での欠席をしたことはない。
というよりは、
気持ちの糸を張り続けて強引に押し切ってきた、とも言える。
とあるイベントに出演する前日に38度の高熱を出したことがある。
冷静に考えれば休むべきだった。
しかしエナジードリンクと気持ちで押し切って、強引にイベントへ出演。
数カ月前から準備をしてくださったクライアントに迷惑を掛けたくない思いと、
せっかくイベントに見に来てくれるお客様をガッカリさせたくない思いで跳びきった。
不思議と演技中は体調不調のことは忘れて、
部屋に帰った瞬間、倒れるように布団に入った。
週に10回のショーを公演しているとはいえ、ラヌーバも自分の感覚は同じだ。
毎回ショーを見に来るお客様は違し、
お客様によっては一生に一度のチャンスかもしれない。
こちらの事情がどうあれ、応えたい。
こう常に思っている。
いまだに答えは出ない
シルクドソレイユのアーティストには「病欠」と「有給休暇」が存在する。
わりとみんな有給休暇はちゃんと使う。
身体が痛いと言えば、シッカリ時間を取って休む。
では自分はどうしようか?
たぶんだけど、フィジオに一発アウトを言い渡されない限り、
意地でステージに立つんじゃないかな。。。
アーティスト生命を考えれば賢い判断ではないだろうし、
常に万全の状態で身体を維持するのがプロだろ?!なんてお叱りも聞こえてきそうだ。
きっとここに、
プロとは何か、
アーティストとは何なのか、
といった、簡単には割り切れない価値観が存在する。
結局、答えは出ていない。