シルクドソレイユアーティストの日常

ニュートラルマスクのワークショップで「表現力」のイロハを叩きこまれてきた

The Play is the Thing

伝わるのはたった7%
これはコミュニケーションにおける「言語情報」で伝わる割合だという。

アルバート・メラビアン – Wikipedia
矛盾した内容を送っている場合、

言葉がメッセージ伝達に占める割合は7 %、声のトーンや口調は38 %、ボディー・ランゲージは55 %と言う事です。

「ボディーランゲージ」は言葉と同じか、それ以上に相手へと伝わる。

これはステージ上でも同じ。
声を発するお芝居はセリフも重要かもしれない。
しかし自分たちはセリフを使わずに客席とコミュニケーションをする。

じゃ、どう動けばより伝わるのか?

今回、そんなステージで有効なボディランゲージを学ぶため、
ラヌーバで主役のキャラクターを演じている「Cheryl Ann」による、
Neutral Mask(ニュートラルマスク)のワークショップが開催された。

Neutral Mask(ニュートラルマスク)とは?

自分はこの言葉を知らなかった。
演劇界では一般的なトレーニング法みたい。

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ザックリいえば、能面みたいなマスクを付けて動き回る。

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まさにこんな感じ。
一見怪しい集団だけど、本当にこんな風にみんなで動く。

このトレーニングの趣旨はまず、顔の表情に頼らないことだ。
もちろん表情も大切なんだけど、顔の表情を作っていくと表情だけで誤魔化してしまう。
小さなステージなら良いかもしれないけど、大きなステージじゃ顔の表情は観客席まで届かない。

身体全体で表現する必要がある。

これはダンスの世界でも「顔サー(ガンサー)」って揶揄されるらしい。
いちスタイルって話もあるけど、顔芸だけの踊りじゃダメって戒めなんだろうね。

自分もこれは耳が痛い。
なぜなら高校生の頃からずーーっと、顔芸で縄跳びをしてるって言われてきたからだ。
至近距離で跳ぶことが多かったので顔芸もある程度通じるけど、
いまの広いステージでは正直微妙。

むしろ顔芸によって身体の表現が疎かになってる。

★★

Neutral Maskでは表情のないマスクをつけることで、強制的に顔芸を封印する。
同時に顔を見られないという謎の安心感があり、動く恥ずかしさを克服しやすい。
この羞恥心こそがステージでの最大の敵だったりする。

そもそも人前で緊張しないってのは不自然。
さらに動いたり歌ったり演じたりすれば、羞恥心が出て緊張するのは自然だ。
でも無駄な緊張や羞恥心を克服できないと、演じるステップには進めない。

んで、このマスクは羞恥心を乗り越えるためのイイ盾になるのだ。

考えない、作らない

ワークショップ中にいくつかのキーワードが頻繁に出てきた。

1.呼吸
2.考えない
3.自然に出てくる動きに任せる

呼吸は感情を作るという。呼吸のリズムによって「喜怒哀楽」が生まれる。
そしてそれは、身体の動きへと伝わっていく。
別に何も考えてない。
なのに不思議と呼吸を意識すると気持ちが変化していく。

すると、動きが生まれていく。

繰り返しだけど、ホントに何にも考えてない。
ここはこういうシーンでとか、この動きが正解かな?とか、まったく皆無。
本能のままに動いてるってのが近いかもしれない。
さらに面白いのが、この無意識に出てきた動きに合わせてまた気持ちが変化していく。

こんなスパイラルを繰り返しながらワークショップは進んでいった。

お前は動きすぎ

ワークショップの最後に講師のCheryl Annからのコメント。
まぁ通常だと参加者の良かった所を指摘していく。

けど自分はガッツリとダメだし(汗)

その場では「なんで?」って少しカチンと来たけど、
考えれば確かに的を得ててぐぅの音も出なかった。

「お前は動きすぎ。」

この一文に全てが集約されている。

ワークショップ中、顔芸の封印された自分はどうしていいか分からなかった。
しかも一人で立たされた瞬間、激しい不安に陥る。
人間、不安になると無駄に動くようになるんだね。
Cheryl Annはこれを見抜いて、お前は動きすぎって指摘したのだと思う。

★★

あまり参加者は多くなかったけど、正直にすごいなぁって人が多かった。
この場所に来るべくして来たんだって思う。
無表情のはずのマスクなんだけど、時々表情があるような錯覚に陥るほど。

ワークショップを通じて、改めて自分の無力さと無知さを痛感。
何が足りないのかも少しだけわかった。

演じるのは好きだけど、道のりは長いなぁ。。。