こんにちは!
縄跳び伝道師のまっちゃん(@macchan8130)です。
しばしば「パフォーマンスと競技の違い」が議論になります。技はスゴイけどお客さんにを意識してないとか、縄跳びしていないとか、切り口によっても議論は活発です。
2019年5月に日本なわとびアカデミーの交流合宿を開催し、ダブルダッチスクールDDFAMのKO-SUKE先生を招きました。
彼の講座を受けて、思考の整理が一気に進んだので健忘録として記事にまとめておきます。
[toc]目的にするポイント
パフォーマンスと競技では細かくいうと目的にするポイントが異なります。それぞれのポイントを分解して整理していきましょう。
パフォーマンスは観客があって完成する
パフォーマンスには観客が必要不可欠です。演技をする人間だけではパフォーマンスが完成しないのです。
え?演技自体は別にどこでもできるじゃないかって?
そうじゃありません。
目的なく演じられることに価値がないのです。観客に対して表現をすることが目的なので、表現する対象がいなければ、演じる意味がなくなってしまいます。
さらに言えば観客もパフォーマンス要素のひとつなので、客の性質や雰囲気によってもパフォフォーマンスの良し悪しが変化するのもポイントですね。
競技は独立して完結できる
競技に必要なのは極論、ルールと審判だけです。
ルールの中に観客の盛り上がりという基準がありますが、実際の採点で占める割合はごく一部ですね。なんなら、観客ゼロであっても十分に採点可能です。
極端なことをいえば、誰も居ない体育館で一人で演技をしても採点は可能です。演技を撮影して後ほど動画で採点しても、結果は大きく変わらないからです。
観客が盛り上がれば競技者は心地よいですが、それ以上でもそれ以下でもありません。
パフォーマンス = 観客が必須、居ないと完成しない
競技 = ルールと審判さえいれば観客はどっちでもOK
大切にしたいポイント
観客の有無で大きく目的とするポイントが異なることを整理しました。ここからさらに、パフォーマンスと競技が大切にしたいポイントを考えていきましょう。
大切なポイントではありません。
それぞれの当事者が大切にしているポイントです。
パフォーマンスは観客にどう伝えるか?が大切
観客に何を伝えるか?どうやって伝えるか?を考えなければ、パフォーマンスは完成しません。極論、難しい技も動きもスパイスでしかないんです。
演技をする中で観客にはたくさんの情報を伝える手段があります。
これらの要素を組み合わせ、トータルで自分達が伝えたいメッセージや表現したいことをプロデュースします。
とくにポイントなのが振り付けの中に()として技が入っている点です。表現する技術の基礎として技は必要ですが、あくまで他の要素と並列でしかないんです。
競技は如何に高い点数を獲得するか?が大切
競技で重要なのは点数です。勝ち負けを決めるのはすべてが点数ですからね。
1点でも点数を高くするためにはどうするか?が競技をしている当事者が最も大切にしているポイントです。
点数にならない要素は無駄として排除されます。すなわち、点数の取れない音楽は意味がありませんし、点数の取れない技も極力避けることになる。
ゆえに点数が高くなる技術が急速にに高度化し、競技のほうがパフォーマンスよりも技の難易度は明らかに高くなるのです。
パフォーマンス = 観客に何を表現して伝えるか?
競技 = いかに高い点数を獲得するか?
パフォーマンスと競技の異なるアプローチ例
パフォーマンスと競技の違いを「観客」の有無から大切にしている点で整理してきました。次は具体的に両者で異なるアプローチ例を見てみたいと思います。
衣装の選び方
競技において衣装は動きやすいか?の一択です。もちろん衣装の見た目が採点基準に入っていれば別ですが、なわとび競技に「衣装点」が入るまでは動きやすさが最優先されるでしょう。
一方でパフォーマンスにおいて衣装は総合プロデュースの重要な要素です。
多少の動きにくさがあっても、表現のために必要であれば衣装を選びます。優先順位が高ければ振り付けを変えてでも衣装を採用するのです。
競技:動きやすさ・合理的を優先
パフォーマンス:動きやすさは二の次、表現に合うモノを優先
音楽の選び方
競技において音楽は付加要素の1つです。
点数が取れる音楽と、そうでない音楽は確実に存在します。つまり自由に音楽を選んでいるようにみえて、点数にプラスになる音楽を選ぶ傾向が強くなります。
一方でパフォーマンスの音楽の選び方はもっと複雑です。
自分たちの好みはもちろんあります。しかしそれだけでなく、演技を見せる観客に狙った反応をしてもらえる音楽を戦略的に選びます。2曲以上を組み合わせて雰囲気を変える手法も、観客の反応を意識して曲を意図的に変化させているのです。
競技:点数の取りやすい音楽を探す
パフォーマンス:観客の反応を想像して選ぶ
まとめ
この記事では、改めて競技とパフォーマンスの違いを分類してみました。
自分もシルク・ドゥ・ソレイユに出演していたとき、この違いに悩まされました。頭では理解していても、長年染み付いている体の動きや思考のパターンが邪魔をしてくるんです。
改めて分類してみてわかったのは、良し悪しではなく「違い」なんだということ。
なわとび業界も2019年に世界組織が新しくなり、新たなルールで2020年に世界大会が開催されます。この大会は競技の側面が強い大会です。一方で日本のダブルダッチシーンは、これからもパフォーマンスの側面が強い大会になっていくことでしょう。
大切なのは違いを理解すること、そして可能なら両方を経験することかなと思うのです。