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ギネス記録保持者にとって、記録そのものは重要ではない理由

http://www.flickr.com/photos/19299399@N00/3488909932
photo by Baptiste Pons

縄跳び関係者にはギネス記録を持っている人、過去に保持していた人が多い。

たとえば縄跳び仲間のみむさんは4つ、なわとび小助のヒジキも5つの記録を保持している。他にもおしり跳びとか両足とびとか6重跳びとか・・・数えると結構な人数が記録を持っている。

ニュースリリース|縄跳び超人みっちゃんが、日本人パフォーマー前人未到【4つのギネス世界記録】を樹立!

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ギネス記録はスゴイ。何しろ世界一の記録だ。でもよく見てみると、本当にこれってスゴイの?と耳を疑うような記録があるのも事実。たとえば下の記事のPeter Nestlerさんは、水中で1時間以内に何回縄跳びが出来るか?というチャレンジをしている。

http://www.newsobserver.com/2014/10/17/4241933_shaffer-underwater-rope-skipper.html?rh=1

彼はこれ以外にも沢山の記録を持っている。ただこう言ってしまうと申し訳ないが、その殆どは彼以外の誰もチャレンジしない。

では何故、彼はこんなにギネス記録にこだわるのだろうか?

『ギネス記録保持者』という戦略的発想

ギネス記録には大きく二種類あると思う。

ひとつは本気で超人的な記録。たとえば6重とびを2回跳ぶとか、自分は絶対できない。おそらく世界中を探しても2回出来る人なんてまず居ないと思う。本気で練習して、練習して、練習して、やっとの思いでたどり着く境地。

もう一つはいわゆる「よく見つけたね…」「よくやったね…」的なやつ。先に上げた水中で1時間跳びもこっちの部類。時には本気でやれば自分でも記録抜けるんじゃね?と思う記録もあったりする。さすがに1時間も水中にいるのは御免だけど…。

ではなぜ「そんなこと誰もしないよね?」みたいな記録に挑む人が多いのか。

それは端的に話題性だ。ギネス記録が話題に上がればPeter Nestlerさんの名前が記事に取り上げられる。うまくすればテレビ出演だって出来る。あなたもギネス記録更新と銘打った番組を見たことがあるはずだ。

彼らは話題を得ることで注目を集める。それが仕事につながる。そう、ギネス記録を持つというは戦略的な作戦なのだ。

★★

この手法は世界一小さいサイコロを作った入曽精密という企業の戦略に近い。

http://www.iriso-seimitsu.co.jp/tech/showcase3

この世界一小さいサイコロはあくまで広告塔。これは「うちの工場はこんな精密な仕事ができますよ!」というアピールで、別に本当に使うわけでもなければ、商品として採算を取ろうとは思っていないはず。あくまで大切なのは広告塔としての話題性であり、ここから繋がる別の仕事への足掛かりなのだ。

同じことがギネス記録保持者にも言える。たとえそれが「水中で1時間縄跳びをする」みたいな挑戦でも、それが話題になれば作戦勝ち。縄跳びをしています!こんな事ができます!ギネス記録保持者です!!(ドヤァァ!!)というわけ。

俺でもその記録抜けます。は既に負けている

こうした話題性を主眼にした記録には「これ俺でも抜けんじゃね?」というのも少なくない。きっと縄跳び系の記録であれば、調べたら1つぐらい自分でも記録更新出来るのが見つかる。

だが、この時点で自分は既に出遅れている。なぜなら「俺でも抜けんじゃね?」と思える記録であっても、話題性があればそれで十分に価値がある。しかも話題は最初に世間に打ち出した人が仕事を総ざらいしていくのが普通で、メディアもイベントも最初の話題作りで一気に仕事が舞い込んでくる。

後出しジャンケンで「○○の記録抜いたよ!!」なんて声を出しても、残念ながらその時には話題は終息していることが殆ど。つまり水中で1時間跳ぶみたいな記録であっても、その一番ノリにこそ全ての恩恵があって、二番手以降には殆ど何も残っていないのだ。

まとめ

殆どの顧客にとって、実は記録の内容なんてどうでもいい。

30秒間で縄跳びをどれだけ跳ぼうか、何回のリフティングをしようが、あまり興味は無い。なぜなら顧客は素人のケースが殆んどであって、その記録がどれだけの水準にあるかや業界の事情なんて知ったこっちゃない。ただ「ギネス記録保持者って、なんか凄そう!」というインパクトで仕事をお願いしているに過ぎない。

顧客は自分たちに何を求めているのか、またどのようにマーケットに自分を売り込んでいくか。

こうした戦略的に市場を見る目が無いと、いくら技術があってもプロになることは出来ない。