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縄跳び世界大会でジャッジ(審判)して気づいた、勝つためのスポーツへの向かい方

こんにちはー。縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

先日、スウェーデンで行われた縄跳びの世界大会でジャッジ(審判)をしてきました。

縄跳び競技は大きく分けて「計測種目」と「自由演技」があり、それぞれに細かい採点基準や規則が決まっています。

シルク・ドゥ・ソレイユへの出演でしばらく競技から離れていたのですが、帰国を機にもう一度競技規則を勉強。無事にジャッジ試験に合格し、再び競技としての縄跳びの最高峰を見てきました。

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競技の進化が革新的

縄跳び選手としての粕尾将一が引退したのは2009年のアジア大会。あれから7年、世界のレベルは恐ろしいほどに進歩を遂げています。

分かりやすい所だと計測種目。たとえば30秒間でかけ足とびが何回とべるか?という種目があります。

自分が最後に出場した2008年世界大会では、男子優勝者が「96.5回」です。今回の2016年世界大会では、男子優勝者が「111回」です…。

第7回世界ロープスキッピング選手権大会2008|男子総合
第11回世界ロープスキッピング選手権大会位2016|男子総合

え?14回?と思いますよね?でも、30秒スピードでは右足が接地した回数をカウントします。つまり実際には。30秒間で28回も多く回してる計算。30秒間で222回も跳んでるんです!!

アジア勢の大躍進と技術

2008年当時、アジア選手はほぼメダルが取れませんでした。時代は欧米諸国。彼らの強さに圧倒されてまったく歯が立たなかったのです。

ところが2010年頃から徐々に上位に食い込むアジア選手が現れ始め、2016年現在ではアジア選手は大躍進。

なかでも男子選手の活躍がめざましくアジア人初の世界チャンピオンである香港の「Ho Chu Ting選手」をはじめ、中国・香港・韓国の選手が表彰台を独占する部門すら出てきました。

この背景には勝つためにスポーツとして縄跳びに向き合った、アジア勢の意地が見える気がしたのです。

アジア選手もルールを学び、分析し、徹底的に研究するように

スポーツにおいてルールは絶対です。これまでアジア選手が勝てなかった理由の一つに、ルールの解読不足がありました。

縄跳び競技のルールは難解です。英語で細かい概念を理解する必要があり、一朝一夕で理解できるものではありません。そのためアジア選手は、自身がやりたいだけの点数が取れない方法を連発してきたのです。

しかしどれほど上手であろうとルールに則っていなければ点数が出ない。

この数年でアジア勢はこの重要なポイントを痛感し、徹底的にルールを分析して競技に挑んでくるようになりました。

好きなようにやっても、スポーツで勝てない

ジャッジ(審判)として観る演技と、パフォーマーとして観る演技は全く印象が違います。

ジャッジ目線だと「この手があったか!?」という発見が多い。ルールに則った上で、こんな点数のとり方があるのかと驚くんです。

一方パフォーマー目線だと、残念ながらどれもこれも似た演技に見えてしまう。技として見れば秀逸でも、フォルムや動きとして見れば違いが細かすぎて分らず、感動は少ない。

トップ選手はいい意味でパフォーマーにならず、真っ直ぐに競技に取り組んでいたんです。

自由演技をするからには、みんな盛り上がれば嬉しいし拍手がほしいんですよ。でも中途半端なパフォーマーになってるようではスポーツでは勝てません。

歓声や拍手は二の次として割り切り、本当に重要なルールにだけ焦点を充てられるかどうか。これが、アジア勢が大きく変わったポイントでした。

技術革新で欧米諸国を置き去りに

アジア勢は新たな技術革新も起こしました。

これまで主流だった欧米諸国のやり方をぶっ壊し、全く違う次元の技術を提案してきたのです。

スピードを競う競技では、今まではこの写真のようなフォームが主流でした。

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これが今はこうなっています。

昔のフォームに比べて上半身を極端に倒し、内側に含むような姿勢で跳んでいます。さらにロープを回す位置が腰辺りだったのが、太もも〜膝ぐらいまで降りてきています。

このフォームの利点はロープが短くできること。1mmでもロープは短いほうが早く跳べますからね。しかしその分、引っかかるリスクが大きくなる。彼らは短いロープでも失敗しないため、猛烈な練習を積んでいるに違いありません。

アジア勢は動画のようにフォームに独自の進化(深化)を加え、圧倒的な技術による力で世界の頂点に君臨しているのです。

ルールを理解して、分析して、壊す

フリースタイルは自由にやっているようにみえて、実は細かくルールに則った構成をしてます。そのためにはルールを理解すること、さらに分析する努力が必須です。

審判目線で見ると「上手く点数を取りに来てるなぁ」と思える演技がいくつもあります。

しかし同じルールに対して同じ解釈・アプローチをして競っても、先駆者には勝てません。欧米諸国優勢だった時代は、彼らが先に縄跳び競技をはじめたアドバンテージとも言えるのです。

ルールに対してアプローチを変え続け、ぶっ壊していく。

この思考を持ってトレーニングを積むことが、勝つためのスポーツへの向き合い方なのです。