人は何かを楽しんでいる時がもっとも上達します。
子どもや生徒さんが活き活きと練習をしている姿を見れば、先生方の気持ちも自然と軽くなるものです。
その一方で楽しんでもらう仕組みづくりは難しい。「いかに楽しんでもらうか?」を苦心して研究をしている方も多いと思います。
そこで今回は、過去に実際なわとび教室で実践した人に楽しんでもらう仕掛け作りを紹介したいと思います。
1.「もう出来る」をさせる
まず心掛けたいのは「もう出来る」を見つけることです。子どもにとって「習得済み」は何とも心地よく誇らしい。壊れたように前跳びを跳び続ける子どもを見たことはありませんか?彼らも同じ理屈です。
「もう出来る」をさせることは「よく出来たね」を子どもに与える手段になります。しかもほぼ確実に「よく出来たね」と褒めることも出来ます。また明言しなくとも、満面のドヤ顔でこちらを見つめていれば大成功です。
できる事を繰り返しても上達しないと思われがちです。しかし「ヤル気」を起こさせるという意味では上達に大きく関係します。
ヤル気が出た子どもは自ら進んで学びます。指示をしなくても勝手に練習を続けます。この状態こそが「上達のための準備段階」なのです。
2.そんなの出来るよ!と錯覚させる
できる事を続けて自身とヤル気が出てきた頃合いを見て、次は子どもを錯覚させます。「そんなこと出来るよ!」と子どもに思い込ませるのです。
自分は錯覚を作るときに「ヨコの技術」を利用します。
参考記事:俺の考える技術論 「タテ」と「ヨコ」の技術
たとえば「1回旋2跳躍」は非常に効果的です。
これは幼稚園生、小学校低学年がやる前とびですね。
ではあなたも実際に跳んでみてください。一回旋二跳躍ができますか?
★★
実際に跳ばれた方はお分かりと思います。これが案外難しい。小さい子どもが出来るのに、なぜ大人が出来ないのか不思議ですよね。
種明かしをすると、実は今あなたがやった動きは小さい子どもがやる動きと厳密に言えば違います。表面的には同じように見えるのですが、あなたがやった一回旋二跳躍は高度なロープ操作が必要な別の技なのです。
ためしに1年生と6年生で一斉にやると、殆どの1年生は出来るのに6年生の大半は苦戦するという面白い光景が広がります。本人達はなぜそうなるかは理解していません。しかし1年生の方は「前とび」の練習に役立ち、6年生の方は高度なロープ操作を練習するため「二重跳び」の習得に役立ちます。
このように自分ならそのぐらい出来るよ!と感じる課題を上手に提案してあげることで、ヤル気の低下を防ぎ楽しんでもらうことが出来るのです。
3.かっこいい!やりたい!という思いを引っ張る
子どもには見た目が重要です。パッと見で「すげぇ!!!」と思えるような動きは積極的に取り組んでくれます。
たとえば身体を一回転させる技なんかは大人気です。
いきなり身体を一回転させて跳ぶので最初ビックリします。多くの子が「こんなの無理…」と感じると思います。しかし実際にはとても簡単な技。前とびが1回でも跳べる子なら、誰にでもできます。
これは「2.『そんなの出来るよ!』と錯覚させる」と反対方向のアプローチです。「そんなの無理…」を思うような課題を「自分にも出来る!」へ促していく。見た目にカッコイイ技はモチベーションを上げるのに大変効果的です。
まとめ
楽しさは主観的な感覚です。本人が「楽しい」と思ってはじめて、楽しんでいるという状態になります。
では他者の働きかけで楽しんでもらうことは不可能なのでしょうか?
そんなことはありません。多くの人に共通する「楽しめるエッセンス」は存在します。このエッセンスを見つけるには、客観的に「楽しさ」を分析する必要があるのです。自分が楽しいから相手も楽しいに違いない!では、あまりに根拠が弱すぎます。これは「自分」というたった1人のサンプルを万人に無理やり当てはめようとする行為です。
なぜこの課題が楽しいのか?誰が楽しんでいるか?どこに楽しさを生み出す要素があるのか?を徹底的に研究しましょう。
運動学の権威である金子明友教授は「客観とは主観の集合体である」と述べています。つまり楽しさという主観的な感覚であってもサンプルを集めて凝縮すれば、「楽しさ」のエッセンスが生まれるのです。
是非一緒に世界中の運動の「楽しさエッセンス」を見つけましょう。
- 作者: 金子明友
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