2014年の年末にこんなニュースが駆け巡りました。
Cirque du Soleil’s Next Act: Rebalancing the Business – WSJ
シルクドソレイユの創始者であるギー・ラリベルテ。彼は会社所有権の90%を保有していると言われています。今回の記事では、彼の保有する所有権の20-30%を売却する方向で投資家を募集していると報じています。
相次ぐショーの閉幕と不幸な事故
シルクドソレイユは1984年から2006年までの間、20のショーを開幕しました。そして2007年から2012年の僅か6年で14のショーを開幕。しかし残念ながらこの中で5つのショーが早期閉幕に追いやられてしまいました。
また2014年には30年の歴史始まって以来、初の死亡事故が発生。また別のラスベガスショーでも落下事故が発生し、ショーの安全性や危機管理の問題点など、社内だけでなく世間にも大きな波紋を呼びました。
収益の減少、リストラ、予算削減・・・
2012年、シルクドソレイユは初めての財政赤字になりました。
この事態を受け、モントリオール本部を初め多くのショーで解雇や解任が続発します。なかにはアーティスト55名も含まれており、ラヌーバからも2名が解雇を言い渡されました。
その後も財政不振を立て直すために様々な手段が講じられました。ツアーショーに同行する公的学校制度の廃止、保険制度の見直し、勤続記念ジャケット配布の見送り。
些細なカットから大規模な削減まで、各所でのリストラや予算削減が未だに敢行されています。つい先日もラスベガスショーの責任者が兼任になることが発表され、何名かの役員がリストラの憂き目にあっています。
ブルー・オーシャンからレッド・オーシャンへの転換
シルクドソレイユは頻繁に「ブルー・オーシャン」の例として挙げられます。競争相手が多く、血で血を洗う「レッドオーシャン」に対し、競争相手の少ない新たに開拓された市場は「ブルー・オーシャン」と呼ばれます。
ところがここ数年、シルクドソレイユに追随するカンパニーが急増しています。記憶に新しい「empire」や「シルク・エロワーズ」、またシルクと名の付かずともコンセプトの近いマカオ「The House of Dancing Water」「Les 7 doigts de la main」のような競合カンパニーが台頭してきました。
出演者にはシルクドソレイユ出身者も多く、ノウハウを学んだ新世代とも言えるでしょう。
EMPIRE
the house of dancing water
Cirque Éloize
Homepage | Les 7 doigts de la main
こうした背景を創始者のギー・ラリベルテは次のような言葉で表現しています。
‘we are a rarity—but the rarity was gone’
(我々は希少な存在である。だがその希少性はもう過ぎ去ってしまった)
所有権の売却と新規市場開拓で抜本改革を
世界経済、サーカス業界の動向、そして不運な事故・・・こうした要因が重なり2013年の収益は約8.5億ドルまで低下。前年2012年の10億ドルから15%の減収になりました。この収益も過去のショー閉幕をはじめとしたコストの相殺に費やされ、2014年も財政不振が暗い影を落としています。
創始者のギー・ラリベルテは2014年12月、こうした状況を打破すべくシルクドソレイユ所有権の20-30%を売却することを発表しました。経営責任者のダニエラ・ラマーは所有権売却による投資収入の総額は15億ドル〜20億ドルを目指すと述べています。
また今回の投資では「戦略的投資」という言葉を強調し、これまでシルクドソレイユが苦戦を強いられてきたアジア圏、特に中国・インドでの新規市場開拓を目指すと言います。
さらに新たな市場開拓としての、子ども向けテレビ番組、テーマパーク、小規模ホテルのキャバレーショーを発表。またスペシャルイベントと呼ばれる短期ショーの売上が1500万ドルから3700万ドルに上昇していることから、今後も新規市場開拓に力を入れていく意気込みを持っているとのことです。
◆メキシコで開演したキャバレーショー
JOYA: New Show. Riviera Maya, Mexico | Cirque du Soleil
◆シルクドソレイユが計画中のテーマパーク
GRUPO VIDANTA AND CIRQUE DU SOLEIL EXPAND PARTNERSHIP TO CREATE WORLD’S FIRST ENTERTAINMENT PARK ANIMATED BY CIRQUE DU SOLEIL
今後の動向に注目
シルクドソレイユは今、大きな転換期にあります。日本の常設ショーZEDが閉幕してからというものの、なし崩し的に暗いニュースが跳び込むようになりました。
出演する側から見た、ZED閉幕のショック – 縄のまっちゃん公式ブログ【旧ブログ】
いまのシルクドソレイユを見て、モントリオール国際サーカス学校の元ディレクターは厳しい言葉をかけます。
“Are they just a machine to print money?”
(アーティストは単なるお金を生み出すマシーンなのか?)“If you’re not capable to maintain and refresh desire, why are you there?”
(彼らを守り求めるモノを回復させられないなら、もはやあなた達は不要である)By Jan Rok Achard
ひとりのシルクドソレイユ出演者として、今回の投資が上手く機能してくれることを願って止みません。
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