男子新体操がシルクドソレイユ内で注目を浴び続けています。
先日の「笑ってこらえて2時間スペシャル」で男子新体操出身のアーティストにスポットが当てられ紹介されていました。また日本公演中のOVOにも男子新体操出身のアーティストが出演しています。
この現象は2011年のMichael Jackson The Immortal World Tourが開幕された時から始まりました。突如としてシルクドソレイユが男子新体操のアーティストを抜擢し、アクトを創作し始めたのです。
では、なぜ男子新体操は突如注目を浴びたのでしょうか。
技術はそこまで高くない?
男子新体操は素晴らしい技を繰り出します。しかしトップレベルの体操競技やタンブリング競技に比べると、技術はやや落ちます。
というのも後者2つの競技は「技自体」を純粋に競うのに対し、男子新体操は「道具に扱い」「音楽との調和」「揃い具合」といった複数の要素で競われるから。いくらハイレベルな技を繰り出しても、これらの要素に合致しないと点数が出ない仕組みなのです。
とはいっても、上位になれば伸身二回宙返り*1のような難易度の高い技を繰り出す選手も居ます。体操競技やタンブリングで世界トップにはなれないかもしれませんが、シルクドソレイユが求める基準には十分達していると言えます。
シルクドソレイユが注目した「シンクロ」と「前宙伏臥」
求める基準の技術はある。しかし体操競技やタンブリングのトップ程ではない。では純粋な技術以外にシルクドソレイユが注目した点は何だったのでしょうか?
その1つ目は「動きのシンクロ」。
男子新体操の集団演技は、驚異的なまでに動きを揃えることで有名です。一糸乱れぬ、とはこのことだと思い知らされるほど。知り合いの経験者によれば呼吸で動きを合わせることで、あそこまでシンクロした演技をすることができる言います。
これが普通の体操選手には難しい。
ラヌーバにもタンブリングとトランポリンを使ったアクトがあり、動きを揃える振り付けがあります。しかし、男子新体操と比べると揃っているとは言いがたい。
なぜなら「揃える」というのは非常に難易度が高いんですよ。シルクドソレイユのアーティストでも、男子新体操のようにシンクロさせるのは簡単じゃない。人と揃えるためには別にトレーニングが必要なんです。
そして「伏臥」という男子新体操特有の動きは大きな衝撃を与えました。
(※)前宙伏臥の動画以前マイアミのMichael Jacksonのアリーナショーをラヌーバの集団で見に行きました。ここで男子新体操のアーティストが前宙伏臥を決めた瞬間、ラヌーバのアーティストからは悲鳴に近い歓声が上がりました。
伏臥は一般的にトランポリンでやる技。普通の床ではまずやりません。それを知っているアクロバットの専門家たち、とくにアーティスト達には大きな衝撃を与えました。
彼らを抜擢したキャスティングも、伏臥には同様に驚愕したことでしょう。
まとめ
ある時、とある日本人アーティストがディレクターに男子新体操の演技を見せました。ディレクターは驚愕し、その場でキャスティングに連絡を入れたといいます。シルクドソレイユに抜擢された瞬間でした。
これまで見てきたように、男子新体操にはショーで活用出来るだけの十分なポテンシャルがありました。抜擢すればそのままショーになる。むしろ起用が遅すぎたようにすら感じます。
将来、男子新体操出身のアーティストの活躍の場は広がると思います。
同じ日本人アーティストとして、今後の活躍が楽しみです。
*1:身体を真っ直ぐに伸ばした状態で2回転の宙返りをする技