なわとびパフォーマーの仕事論

プロが「ノウハウ」を公開しても仕事が無くならない理由

Teaching

Photo by Nathan Russell

人にモノを教えるときに何が一番大切だと思いますか?

知識や情報はもちろん大切です。効率良く学ぶには手続きを知ることが重要です。しかしこれらより断然大切なことがあります。

それは言葉力。夏まゆみさんの表現を借りれば「魔防の言葉」を操れる能力です。

この言葉力は、教えるプロがプロたる所以。それも、将来あなたが教えるプロとして仕事ができるか否かを決定付けるぐらい大切な要素です。

知識は熱量で伝える

たとえば子どもに前とびを教えるとします。「縄を肩でかかえるように持って・・・」「前に進みながら回して・・・」といった知識は上達の手助けになります。しかし大切なのはこれらの知識を如何に子どもに届けるかなんです。

文言を丸暗記して喋ったと所で、子どもには伝わりません。大声で子どもに読み上げさせてもダメです。伝える側の熱量が子どもに届いた時、初めて知識は有効に活用されるのです。

人の注目を集めたいときはどう言えばいいか、振付師として稽古場の空気をコントロールするにはどんな言葉が有効か、吉本印天然素材の現場で試行錯誤を重ねながら「言葉力」に磨きをかけていったのです。  これが指導者としての私の原点と言えます。

ダンススキルなどでは決してなく、どんな相手からでもやる気を引き出し、前向きにダンスに取り組ませるための「言葉」を持っているからです。

出典:エースと呼ばれる人は何をしているのか

うまく子どもをノセられる人

極端に言えば、熱量を子どもに届けられる人に運動知識はさほど重要ではありません。いくら知識が豊富にあっても、子どもに伝えられなければ無意味。立派な研究論文を執筆できても、目の前の子どもに届けられなければ意味がないと思うのです。

このように子どもに熱量を届けられる人は、上手に言葉を操る人とも言えます。

それも単なる「音」としての言葉ではなく、相手の空気を敏感に察知しながらコミュニケーションが取れる事。ひとことで言えば「うまく子どもをノセられる人」です。

人の集中力は長く続きません。それが子どもならなおのこと。「あ、もう集中が切れそうだな・・・」という空気を敏感に察知できる、更にその場面に最適な言葉を選び出せる能力。この能力は実践からのみ得ることのできる経験知です。

塩についてどれだけ勉強しても、実際に舐めてみないと「しょっぱい」という感覚はわかりませんよね。

プロは知識を公開しても全く問題ない

ネットで知識や情報が氾濫しているし、教えるプロの仕事は無くなっていくんじゃないか?という意見があります。たしかにこのブログでも「縄跳び指導法」を頻繁に公開しています。インターネット上で探せば他にも沢山の専門知識を見つけることが出来るでしょう。

ご安心ください。教えるプロは知識が豊富なだけじゃないんです。現場で子どもと対峙した時に知識を上手に伝える「魔法の言葉」が使えるかどうかが腕の見せどころなんです。

逆に言えば知識をひけらかすだけのプロは淘汰されていく。むしろこれは良い事だと思います。

まとめ

情報を伝えるだけを、教えるとは言いません。言葉で相手の内面に知識を響かせ、いかに成長を促すか。単に情報を提供するだけならウィキペディアで十分です。

教えるプロがプロたる所以とは、豊富な知識だけでなく言葉の力で相手に届かせるスペシャリストだから、です。